意外と多いマイホームトラブル
『助けてください』ある日お客様から1本の電話がきました。
相談したいことがあると。どうもマイホーム購入がうまくいっていないようです。消え入るような小さい声で言うので深刻なこととはわかったのですが内容がよくわからないためお会いすることにしました。
後日オフィスの椅子に座るお客様にコーヒーをお出しするいきなり涙ボロボロ。『もうどうしたらいいのかわからなくて』とかなり思いつめているようです。そのあとはしばらく言葉にならない感じでした。
泣き止むまで待っているとようやく話が始めました。家が建てられないと言われたとのこと。自分が望む土地がようやく見つかり次は建物という段階でトラブルになったようです。
お客様が持ってきた書類を見た瞬間思わず『なんだこりゃ!』と言ってしまいました。『ありえない!』そうなのです。お客様は知らない間にトラブルに巻き込まれていたのです。
今回はマイホーム相談はトラブルに関してです。マイホームは高額です。3000万円、4000万円とするにもかかわらず何も知らない素人が『これください』で買おうとするのです。
それはまるで中学生がプロ野球選手に向かってボールを投げるようなものです。結果は全てどんなプロ次第です。何も知らない素人1人で購入に当たるのではなくチームでやればいいのにと常々思っています。
領収書はなんと名刺の裏
お客様の話を聞いて行くとこんな話でした。土地を購入したら建築条件付でした。よく説明を受けないまま、知らないままに売買契約と需要事項説明書に著名・捺印をしました。
建築条件付土地とは土地購入後に売主や売主が指定する建築業者と契約して家を建てるというもので自分でハウスメーカーが選べないと言うものです。
売買契約署のローン特約は3300万円になっていました。ローン特約とはその設定したローンが承認されない場合解約できるというものです。
土地を購入して建物の話をしだすと業者はこんな話をしてきました。
『この土地は建築条件付です。建物はお客様が建てたい家を建てるのではなく私たちが決めて建てるのです。』こう言って4200万円で住宅ローンの申し込みをさせられました。
残念ながらローンは通らなかったのですがお客様は何としてもこの気に入った土地を購入したいので建物の金額を下げるように交渉するも『ダメ』の1点張り。
家はお客様が選ぶのではなく自分たちが建てたい家をお客様は購入するだけだと言うわけです。
持ってきた書類、売買契約署、重要事項説明書などを見ていると1枚名刺が入っていました。その裏にこんな文言が直筆で入っていました。
『金○○○万円を確かに受領しました』
え?いまどき名刺が領収書?どんな仲介業者か聞いていくといろんなことがわかってきました。まずは情報集めをしていきました。
問題はローン条項で契約をやめていないことです。
このまま行くとこちら側からのキャンセルということで違約金発生となり土地の金額に15%払うことになるのではという懸念があることです。
お客様に『どうしますか、キャンセルするのですか?』と聞くもどうしてもこの土地を諦められない様子。かなり気に入っているのでここに自分の欲しい家を建てたいがこの土地は建築条件付でそれもできずでした。
縁がないものとしてあきらめます
状況が動き出したのがそれから1ヶ月後です。再びお客様から涙、涙の電話が入ってきました。あきらめたくないと言うので2時間くらい話を聞いていました。そしてひとしきり大泣きした後に最後にこう言いました。
『あきらめます』
『でもこのまま違約金を払うのもイヤです。』
そして再びお会いすることに。完全には吹っ切れていないものの徐々に次の段階に移ろうと考え始めているようでした。
そして出てきた言葉は『手付金として支払ったお金を返金してもらえないものか。』そう、違約金を払うのではなく返金してもらうことを考えたようです。次の相談内容はこれに変わりました。
私も熊本の知っている不動産関係の方にいろいろ聞いてみました。しかしどこに言っても『それなら私でも知っている』という答えしか聞けませんでした。
そこで熊本で聞くのをあきらめて東京の不動産関係の方に聞きました。するとこんな言葉が帰ってきました。
『永野くん、その視点では解決できないよ。問題はそこじゃない』
不動産トラブルだったので不動産問題にしか目がいってなかった私でした。もっとも誰に相談しても同じ視点でしか答えが帰ってこなかったのですがさすがに東京のプロは違いました。
『顧客保護の観点から作戦を建てないと』
その言葉にハッとして解決のシナリオ作成を始めました。後日お客様を呼び返金までのシナリオを説明。そのための道具や言葉の使い方、話の展開の仕方をレクチャーしていきました。上手に演じてもらえるようにです。
1ヶ月後、ワンチャンスが訪れます。結果的に無事に返金となりました。
それでも私はあそこの土地が欲しかった
シナリオ通りに無事に金銭的な問題は解決したように見えました。でも人の心はそんな簡単なものではありません。本音はあきらめきれないということでした。
次にお会いした時も無事に解決したというのに涙、涙でした。なんで私がこんな目に会うのと思うのは無理もありません。ですがこれが無知の代償です。
本来望むべく解決ではないのはわかっていますが無理なものは無理です。何度も無理だと言った記憶があります。
このお客様より再度電話があったのはそれから結構経ってからです。そして今度は涙声ではなくしっかりとした声でこう言われました。
『土地を探してください。今度こそ自分の夢のマイホームを建てますので』
ようやく本当の意味でのマイホームトラブル相談が解決した瞬間でした。私もこの問題解決で大いに学びました。仕事は優秀なチームでするものだと。
チームで仕事はするものだ
この出来事から全ては人の力が大事なんだ考え優秀なブレーン作りをしようと考えました。かなり時間がかかりましたがようやく相当強いチームが出来上がりました。
もう2度とお客様がこのようなトラブルに巻き込まれないようにとチームでお客様のマイホーム購入をアシストしています。
FPの私が指揮者で優秀な楽器演奏者として司法書士、銀行員、不動産鑑定士、不動産コンサルタント、税理士などで構成しています。
自分で一緒に仕事をして優秀だと感じた人だけを選びました。ほとんどが東京になってしまったのは当然のことかもしれません。
熊本でも東京レベルの知識をあなたに。
それが当オフィスが様々な問題を解決できるようになったきっかけはこのトラブルでした。