ネット銀行は使わないほうがいい?
本日はお客様の住宅引き渡し日でした。中古住宅を購入されたのでお客様、司法書士、不動産仲介、売主夫妻と私の6名で銀行に集合して決済をしていました。
と言ってもFPの私は特にやることもなく書類の捺印のお手伝いなどをしていました。司法書士の書類チェックが終わり銀行から融資が実行されるまでに待ち時間に売主の方と話をしていました。
本当にいいご夫婦で売り出された家も好物件。こういう買い物をいい買い物というんだろうなと思ってお話をしていました。
不動産屋さんからもネット銀行に関しての話が出ました。ある銀行に言わせれば『金利は安いけど手数料が高いですからね』と言っていたそうです。
私の何度かお客様と一緒にその銀行に同行した時に同じ言葉を聞かされているのでその銀行でのセールストークになっているのかもしれませんね。
では本当にこの銀行がネット銀行に対してしているセールストークは正しいのでしょうか。本日はその検証をしてみたいと思います。
ネット銀行の手数料は高い?
私のFPは相談業務になっています。これに対し多くの金融関係者は金融商品販売を中心としたセールスとなっています。
同じFPでも相談業務とセールスでは仕事は大きく違います。セールスは販売しないと売り上げがないので必ず販売になるようにセールストークを駆使します。
それに対して私のようなFP相談を生業にしている人はセールストークを使う必要はありません。別に金融商品を必ずしも販売する必要がなくその代わり相談料をいただいています。
なので私も『きれいごとビジネス』をするに当たっていくつか約束事を作っています。その1つが『セールストークは使わない』です。
ではなぜ販売ではセールストークを使わなければならないのでしょうか?それは触れられたくない劣等比較部分を隠すためだと認識しています。
では今回のこの銀行員の『ネット銀行は金利は安いけど手数料が高いからね』はセールストークとしてどうなのか?
まずは手数料は高いという部分を見てみます。
通常、銀行は手数料より保証料が高くなっています。保証料とはお客様の債権の保証を保証会社がするため、その保証料という代金をお客様に発生します。
保証料と手数料の違いは何か?例えば保証料は途中で借り換えなどが起こった時には未経過分は返還されます。手数料は途中で借り換えなどが起こっても返金されることはありません。
熊本では公務員や上場企業社員などには保証会社を使わずに自分の銀行で債権を保有することが多く保証料が発生しないことからこのセールストークを使っているのではないでしょうか。
高いと言っているネット銀行の手数料はどうでしょうか。例えば楽天銀行の手数料は定額で324000円です。銀行は54000円程度でしょうか。
ということはこの銀行がお客様から保証料をもらうならこのトークは通用しません。保証料を取らないお客様のみ有効ということがわかるかと思います。
金利は安いけど、はどのくらい差があるのか
『手数料は高い』ということに関して説明しましたが保証料が不要と言われた公務員や上場企業などの条件付きではありますがこの部分は正しいということになります。その差は30万程度でした。
では次に金利に関してです。ネット銀行の1番の特徴に金利が低いと言うことがあります。この部分に関して実際の数字を交えて考えてみます。
例えばローン金額3500万円35年払いを考えてみます。例として金利は0.9%としましょう。それに対して楽天銀行は0.517%です。
3500万円 35年払い
金利 0.9% 月97,177円 返済総額 40,814,444円(手数料含まず)
金利0.5175 月91,118円 返済総額 38,301,992円(含む手数料)
差額 2,512,4 52円
いかがでしょうか。確かに手数料は楽天銀行の方が30万円程度高かったです。それは間違いありません。ですが金利差は手数料を加味してもその差は約251万円で7.7倍高いのです。
これで『金利は確かに安いけど手数料が高いですからね』と言うセールストークは成り立っていると言えるのでしょうか。
実際にこのセリフを聞いた時、私は『知らないと思ってバカにして』と思ったのですがそれは私が知っているからなのでしょうか。
住宅ローンは自分で選ぶ時代
住宅ローンを案内するFPからするとこのセールストークはやめた方がいいのでは、私なら恥ずかしくてできないしとても使えるレベルのセールストークではないと思うでしょう。
お客様は住宅ローンに関しては素人であり銀行はプロです。プロが素人に対してこういうトークを使うのは知識差を利用していると思われてもおかしくないです。ですが熊本ではこれが通用しているのが現実です。
街を歩くまでもなく今や高校生でもスマホをみんな持っている時代です。そう情報化社会なのです。
住宅ローン情報だって『熊本・住宅ローン金利』と検索すれば銀行別の金利表などを容易に見ることができます。それと同じように銀行員の話が本当なのかどうかを調べて信用できる判別する時代になっています。
そのスマホ時代にこのようなセールストークをもし今後もするのであればもうそれは『時代遅れ』と言っても過言ではありません。
でもお客様も悪いのです。素人ならプロを味方にすればこんなセリフに頷くこともないです。実際当オフィスに相談に来られる方はこのような説明に疑問を持たれたから連絡してきたのです。
住宅ローンは自分で選ぶ時代になっています。
にもかかわらずハウスメーカーや不動産屋さん、銀行に委ねた結果とも言えます。自己責任の時代にふさわしく住宅ローンも自分で選べるようになればきっとこのような安易なセールストークはなくなると信じています。
ではどんなトークが正しいのか
住宅ローンの金利差は確かにシミュレーションしてわかるように大きな差になります。3500万円の試算では251万円もの差になりました。
ですが実際は住宅ローンは金利だけで決めるものではありません。当オフィスでも確かに受験と同じように本命は金利の低いネット銀行を使うことが多いです。
ですが2番手としては必ず提携ローンのような銀行にも申し込みをするようにしています。それは月の支払額以上の団体信用保険がついておりそれは安心という意味では大変魅力的だからです。
例えば熊本銀行などは金利はネット銀行と比較すると確かに高いのですがそれを補ってあまりある団体信用保険の内容となっています。
死亡した時だけでなく悪性新生物にかかった時にも住宅ローンが精算され、なおかつ本人にがん一時金として100万円も出るのです。
それだけでなく入院した時には本人だけでなく配偶者にも1回10万円出るという医療保険までついているのです。これに加入したら利息の差以上の金額が年齢によっては必要になることだってあります。
となれば金利は低いけどがん保険だけではなく医療保障もついているなど団体信用保険のアピールならば問題ないのではないかと思うのです。
ですが金利を選ぶか、それとも安心を選ぶかはお客様次第です。その選択もさせない熊本の住宅ローン事情はどんなものでしょうかといつも疑問に思っています。